式子内親王

たのむかなまだ見ぬ人の思ひ寝のほのかに慣るる宵々の夢 忘れてはうち嘆かるる夕べかな我のみ知りて過ぐる月日を あはれとも言はざらめやと思ひつつ我のみ知りし世を恋ふるかな しるべせよ跡なき波に漕ぐ舟のゆくへも知らぬ八重の潮風 夢にても見ゆらむものを嘆きつつうちぬる宵の袖のけしきは 玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば 忍ぶることの弱りもぞする